2013年度 卒業設計公開講評会 講評と最優秀選定記録


東工大×藝大×東大×チュラロンコーン大
2013年度卒業設計合同講評会


1. 開催概要

 四大学卒業設計合同講評会は、国内の三大学と海外の一大学から選抜された作品を集めて行う、卒業設計の公開講評会である。学生一人一人が自分とは異なる考えや表現に触れ、これからの建築について考え議論するきっかけとなることを目指して、06年度より「卒業設計合同公開講評会 東工大×藝大×東大」を開催。2010年度には、これまでの三大学に加えて、韓国のソウル大学・中国の北京精華大学を、2011年度には、韓国のソウル大・中国の中央美術学院を、2013年度には、シンガポール大学・淡江大学を招待し、国内にとどまらず広く世界的な視点で建築を考える試みを続けてきた。
今年度は今まで以上に深く海外大学と交流を図ること、建築教育や卒業設計のあり方についても深く議論をすることを意図し、海外から1大学を招き、各大学出身の建築家の方々を審査員に迎え、各大学教員も司会として登壇する形式とした。作品の発表形式も例年の大学混合の形式ではなく、大学毎の作品発表とし、司会教員が各大学での設計教育や代表作品の評価について紹介するコーナーを設けた。
審査員として、遠藤幹子先生、山代悟先生、吉村英孝先生、Rachaporn Choochuey先生を迎え、各大学のラウンドの司会を塚本由晴先生(東工大)、乾久美子先生(藝大)、大野秀敏先生(東大)らが勤めた。国内の3大学から9名、海外大学から2名の計11人がプレゼンテーターとして選抜され、公開審査によってグランプリと審査員による個人賞を決定した。
今年度も、安田講堂が改修工事中のため東京大学工学部2号館大講義室での開催となった。


2. 作品発表と質疑・講評

東京大学ラウンド

- 司会教員(大野)による作品紹介 -
東大の代表3作品の学内での評価について説明する。
川島さんは最も優れた作品に与えられる「辰野賞」、前川君と寺田君は優れた作品に与えられる「奨励作」を獲得した。
川島さんの超高層は近代建築の先を行く新しい超高層の提案で、次の時代の超高層を示唆している。湿っていて、暗い建築であり、画期的な案である。
一般的に東大はプレゼンが弱いが、川島さんの作品はパースが力強く、プレゼンテーションにおいても優れていた。
前川君の提案は日本の一般的な住居構造であるマンションについて取り組んだ物で、ベトナムの集合住宅を思い起こせるようなものであった。
寺田君の提案は、ある種の民俗学や神話を引用しつながら、自らの創作を加え、優れたドローイングによって説得力のある発表であった。
今年は全体的にやる気のあり、チャレンジングな作品が多い学年であった。

- 質疑・講評 -
1. 川島奈々未 『Twining Delta: A Pipeline for Life』
ラシャポーン:
興味深い案だと思った。植物が成長して構造体を覆って見えなくなったら面白い。植物と建築と都市の関係を重視しているように思えるが、どのような機能なのか。普通のタイプの建築にこのコンセプトを適用することも可能だろう。
遠藤:ヒューマンスケールでのアクティビティではどのような新しいことがおこるか。構造の配置の仕方はどんなバリエーションがあるのか。実際に普段植物を育てたりしているのか。
山代:パースが印象的で興味深い。植物の多様性を考える話とHPシェルのような構造の2つのアイディアがあるが、水耕栽培とこの構造を組み合わせたときに、変化はあったのか。
吉村:強い現状批判を感じた。種子を貨幣に対応させている話は、ちゃんと建築に影響しているのか。模型とパースの印象がやや違う。

2.前川智哉 『都市に住む』
山代:
3階建てだが、垂直動線は階段であり、階段につながっていない住居はどのように行くのか。中も作り込んで行くのは共感できるが、各住戸の純粋な良さとして、間口は狭く日当りは悪そうで、良さがあまりわからない。
遠藤:前川君自信の希望がどれくらい設計に入っているのか。どのようにしたら豊かになるということが考えられているのか。住民が好きに位置を変えられるが、好きにやってよいと言われてもやり方がわからないことが多い。ファシリテーションみたいなものは用意されているのか。
吉村:どういうスタンスなのか。共有部分と専有部分が変わっていくというストーリーがあるが、それが建物内だけでなく、外部に広がっていったほうがいいような気がするが、この設計だと占有部が共用部に開いていっても結局建物内で終わってしまわないか。
ラシャポーン:開口部が重要に思えるがどのように操作しているか。

3.寺田慎平 『東京は、ヘテロトピア』
吉村:
面白い視点で面白い作り方。建築が軽すぎる気もするが、自然環境の厳しさに対して、意図的に軽くしているととらえた。
山代:大島の実際の民家もきつい屋根の角度を持つのか。先日ちょうど屋根の職人さんと話をし、天候などで屋根の形が決まるという話を聞いた。屋根勾配は雪や雨などの環境に作用されるが、この屋根勾配は大島らしくないのではないか。何百年も残る可能性がある物だとすると、気候や風土に対応するものであるべきだと思う。ストーリーを持ち込んだときに気候や風土と繋がってないと勝手にかわっていってしまいそう。
ラシャポーン:日本の伝統建築とタイの伝統建築の建築構成の違いが分かって興味深い。伝統的なカタチにする必要性はあるのか。屋根の構造を強調しているが、屋根の形のもつ象徴性を強調する必要は何か。
遠藤:島の人の視点を想像すると、「東大の人が大島に来て物語を作ってただ帰っていった」という勝手さを感じる。地元の素材の屋根幕とかを使うとか、島民のくらしを利用した綺麗な物語になっていたら良かった。

- 会場からのコメント -
塚本(東工大):
川島さんの作品には心奪われた。すばらしい。
ヘリックス構造のようなものは一つずつが柱状にのびているが、螺旋状にできたりするのか。
日当りによって流れる水の温度も変わるだろうし、水をマネジメントすることも考えられる。問題意識はよいが、建築に落とし込む際に飛躍がある。ただその飛躍は大事で、そこにすごさがあると感じた。

チュラロンコーン大学ラウンド

- 司会教員(中村・代理)による作品紹介 -
ラシャポーン先生から事前に頂いた内容を紹介する。
ややテクニカルな教育をチュラ大は行っており、卒業設計ではテクニカルで文化などを大事にする作品が評価される。
Prasansiriさんの作品は、タイでは田舎の人口流失が社会問題で、漁村のコミュニティが廃れることがおおい事に対し、入念なリサーチを通して問題を上手く解いており、ソーシャルな問題をフィジカルに解いたことが評価された。
Puttikitさんの作品は、タイの伝統的な人の動きをリサーチして、都市やキャンパスでの学生のふるまいと文化的なデザインを上手く調和させている点が評価された。

- 質疑・講評 -
1.Prasansiri Veerasunthorn 『Ang-Sila Museum』
山代:
コミュニティセンターは今まですんでいた人のためとのことだが、人が減っているなかでここに住んでいる人の生活がどう変化するのか。建物自体については、水面に建てるということで工夫したことがあれば聞きたい。日本でも人口が減っている地域はたくさんあり、それに対して建築で提案をしようという試みをしているが、建築の分野だけでは困難であり、経済の分野なども絡めたアプローチを行ったり、実際に建築家が地域に入っていったりしている。ぜひこれからも情報交換したい。
遠藤:コミュニティセンターでは実際にどのようなことが行われるのか。地元のひとと訪れた人がともに何かをするスペースはあるのか。プレゼンの写真にあったデッキはそのまま使わないのか。
吉村:道があるようなないような陸と海の境界が曖昧になっているような地元の建物の配置が魅力的。だが設計では最後に道を入れたところに意図があると感じた。
ラシャポーン:住宅地の方にも道として表されていないけど橋のようなネットワークがあってそれに似たものを作ろうとしている。タイでも、コミュニティの衰退が大きな問題が起こっているが、それに対して建築だけでアプローチするのではなく、コミュニティアーキテクトのように地域の人と協調した取り組みが行われている。

2.Puttikit Suvarnapunya  『Chulalongkorn University Music hall and performing arts center』
山代:
学内のカジュアルなふるまいの観察は面白いが、デザインにどう取り入れられているのか。学生の活動のきっかけとなる小さな空間が必要となるのではないか。例えば、リサーチした建築では、ハンモックや壁、柱など活動の小さいきっかけがあるけど設計した建築にもそういうのが必要ではないのか。
吉村:パーソナライズドな空間と、パブリックな空間が調和しているのはいい。屋根が高すぎる、パースのテクスチャが高級すぎるなどが問題ではないか。
遠藤:同じような感想。タイへ行くと小さい屋根がたくさんあって、地面に近い所で人々が過ごしていることが多いのに対して、この案はボリュームが大きすぎるのではないか。面積を用意することがそれほど重要なのか。
ラシャポーン:事前のリサーチは面白かったが実際に設計に持って行くと・・・。これはバンコク全体に起きている問題で、巨大な建築が建てられた時に、どのようにそれを人々が使うのか、どうパーソナライズしていくかが大事になるが、彼はうまくそれを伝えられなかった。

- 会場からのコメント -
Prasansiriさんの作品に対して
大野(東大):ツーリストと地元の人のための部分の構成原理が同じところが面白い。今は皆ツーリスト的なところがある。
隈(東大):達者だと思うが、綺麗すぎる気がする。今更こんなに綺麗な公共建築というのも・・・。これからの時代を切り開くような建築にはパッと見、見えづらい。
塚本(東工大):ミュージアムというものが、もっとフィールドミュージアムのように、その地域の生業も体験できるような施設の方がいいのではないか。ミュージアムとコミュニティセンターの境界がなくなっていくようなものを目指した方がよりよかったと感じる。

東京藝術大学ラウンド

- 司会教員(乾)による作品紹介 -
今回の発表者は全て女性で、どれもパワフルな作品が代表となった。
藝大では空間論的な視点でものを作りたい学生が多く、作りたい空間のイメージがあってそれを実現するのにふさわしい敷地を探すという傾向にある。そのイメージにマッチする敷地を探すのに費やす時間がとても長い。3人は作りたいイメージと敷地がうまくあった。都市的な問題にも結びつく視点がある3作品である。
市村さんの作品は、藝大にしては珍しく、マスタープランを計画した作品。学内の講評では空間設計があまりされていなかったが、この発表ではその点が強化されていた。
海老澤さんの作品は海老澤さんのイメージとあう敷地が選べている。1年かけて整理しながら綿密に計画し、やりきった感のあるプロジェクトである。
北城さんの作品は藝大らしい、空間に対する想いが強い作品である。普段は顧みられない場所に取り組んだ。

- 質疑・講評 -
1.市村梓 『Park of Instinct -上野公園再編の一端-』
吉村:
今の上野動物園の動物が一斉に逃げて行く感じなのか。それとも段階を踏んで進んで行く計画なのか。
ラシャポーン:動物を完全におりから出すわけでなく色々な操作をしている。動物がおりに入るまたは人間がおりにはいるという既存の動物園の2パターンに対抗して、とても面白い作品。
遠藤:野性的な恐怖みたいなものがもっと出てくると良かった。動物を点在させました、だけだと少し弱く、食うか食われるなどもっと怖い部分を取り入れられたらよかったのではないか。もったいない。
山代:同じ感想。この案は誰にとって良い動物園になっているのか。人間か、それとも動物か。

2.海老澤ふりあ 『Camouflage City』
遠藤:
自分のイメージに近い敷地を選んだとのことだったが、元々どういうことをやりたかったのか。
山代:普通の再開発ではないことをしたいとのことだが、意地悪に見ると割と普通に見える。橋とかビルとかいった要素は普通の再開発と変わらないのではないか。
ラシャポーン:動線のサーキュレーションが興味深い。動線が2つの場所をうまく繋いでいる。動線がどのように構成されているのか知りたい。
吉村:2つの要素を混ぜる時、この案はそれを形で受けている。操作だけの問題として聞こえてしまって、それぞれの空間体験などが細かくされているともっとよかった。

3.北城みどり 『終末の余韻』
吉村:
色々なシーンがあったが、それはどのような人が当事者になっているのか。どういう立場の人を想定して、パースを描いたのか。先日葬儀に参加して、葬式を理解できない小さな子供を見た。まだ葬儀を理解できないような子供がすごく近くにいるのが衝撃的だったが、そういった利用者を想定した設計をしているのか。ただ空間が演出され過ぎているような気もする。
山代:土木的な物はヒューマンスケールからすると荘厳なものに見える。そういうものを目指したように見えるが、その割には空間が小さいと感じた。

- 会場からのコメント -
藝大の作品全体に対して
隈(東大):イメージからアプローチするのはとても面白い。だが、最後の表現がおざなりになってしまっていて、最終的にでてきたイメージが割と普通。
塚本(東工大):3作品とも共通点があって、分断・境界によってきられているものをつなぐ、間を作る、というもの。ただ分断されていることには意味があったはずだがそこをしっかり考えないと、ただつないでも分断が強化されたり保存されたりに繋がる。
乾(藝大):藝大生は操作論にたいする興味が強く、その中で二項対立的なものに飛びつきやすいのかもしれない。

東京工業大学ラウンド

- 司会教員(塚本)による作品紹介 -
東工大の卒業設計は前期に終了する。提出された作品の中から優秀作品を選抜し、選抜作品が夏明けにもう一度発表。教員は基本的に指導しないのがスタンス。
5年くらい前に模型が巨大化した時期があったが、それはよくないとなり、7月の全員提出の際は、A1以内の模型までという規定になった。9月の選抜者発表ではその制限がなくなるため、学生は夏休みに大きな模型作っている。
教員全員が投票し優秀作品を決定するためあくまでも相対評価。そのため何が評価されてここまで来たかは言いづらい。
東工大では現実の社会問題に対する意識は重要視している。

- 質疑・講評 -
1.山本晃大 『呼吸する箱』
ラシャポーン:
模型が真っ黒だけど、実際も黒だと怖い。最初のスケッチを見たときに京都駅を思い出したのだか、それに対して何か意図はあるのか。大きな活動の場というのはいろいろなものが見える。
吉村:自分が卒業設計をやっていた時はマッチョな作品が多かった。今の学生の作品はさらっとしているものが多い。今回の東工大の作品を見て、またマッチョな作品が出てきたなと感じた。バブル期にはこのような大きな建築が見られたが、それ以降は変わってきている。この大きさの物が、どのように今の都市に立ち現れるのか。
遠藤:分断された物が交わることで、どのような魅力が生まれるのか。
山代:模型は廃墟のような大空間で魅力的だが、実際はよくある商業施設なのではないか。よく見るヴォイドがある商業施設と同じで、普通に見えてしまう。

2.中村衣里 『Love of the city ―道頓堀サーヴェイによる環境再編』
ラシャポーン:
活気のあるところを作ろうとしているのに断面図や特に平面図からは教会のような印象を受けた。平面図では活気が表されていない。プランがスタティックになってしまっている。
吉村:平面ではそれほど面白くないが、断面的には面白い。だがそれがにぎやかさとどう関係するのかは分からない。似ているところを作っている気がしてそういう崩しの仕方に特徴があるように感じた。
山代:3つ設計したのはとてもいい。真ん中の建物が一番この都市を表したものを作ることができそう。
塚本:この作品は伽藍堂的なものを作ることにかけていると思う。がらんどうの空間があって、それが時間ごとに変化していくのが面白いが、少し分かりにくい。

3.伊藤拓也 『乗換と滞在の狭間で』
遠藤:
パースで見ると魅力的だが、巨大さにおののいてしまう部分もある。すみの部分はどのようになってるのか。
吉村:巨大さを感じないように作ろうという意識は感じられる。目的がどこなのか、何が重要なのかわかりづらくなってしまったのではないか。小さい空間を大事にしたのに大きさを感じてしまう。複雑な形を組み合わせて小さくて多様な空間を作ろうとしているのは良い。しかし操作やシステムのみが語られてしまうと、それ以上に重要なことが薄れてしまう。
山代:高密度の中でどうヴォイドをとって行くのかというスタディをした作品だと理解する。ただ、特別な主張が感じられる建物には見えない。実際に建つともっと大きいのではないか。現状を追認しているだけに見えるが、あなたなりのプロテストとかはないのか。

- 会場からのコメント -
東工大の作品全体に対して
隈(東大):力作ではあるが、予見に対する大胆さに大してソリューションのイノベーティブなところがない。
塚本(東工大):やはり労働集約的な作品でスマートさがない。ヴォイドみたいなのを作ればいいみたいになってしまっている。ヴォイドを世の中的に作るためのプロセスに、社会的な話が必要だが、それがなくただ形態を作るだけの話になっている。なんのためのヴォイドなのか。ヴォイドには本当は社会的な側面があるはず。
山代:ほとんどがヴォイドの案であるが、何のためにヴォイドを作るのかがはっきりしていない。

3. 優秀作品の選考と総評

一次投票

全作品のプレゼンテーション・講評の後、審査員による一人5票の一次投票により、最終ラウンドに進む作品を選抜。
結果:
川島4票、寺田3票、Prasansiri4票、市村1票、海老澤1票、北城1票、中村4票、伊藤1票

となり、3票以上獲得した川島、寺田、Prasansiri、中村の4作品がグランプリ決定の最終講評へと進むこととなった。

一次投票での選考基準について

遠藤:プロジェクトへの愛着をどれくらい感じたか、それを表現に落とし込めていたかどうかを基準にした。
(投票作品:川島、寺田、Prasansiri、中村)
山代:一定の価値基準は無く、バランスの取れた思考ができた人を選んだ。
(投票作品:川島、寺田、Prasansiri、北城、中村)
吉村:他の先生とは投票がずれているが、ずれている作品はもう少し話を聞けば出てくるかなと思っていれた。
(投票作品:川島、Prasansiri、海老澤、中村、伊藤)
ラシャポーン:色々な案があり選考が難しかった。藝大のも興味深かったが完成度に不満があった。ただ発展性はあると感じた。
(投票作品:川島、寺田、Prasansiri、市村、中村)

グランプリにふさわしい作品一点を選定

ラシャポーン:寺田案
他の人とは大きく質が異なっていて社会的な関心がありつつ詩的であった。わかりづらい点もあるがとてもよかった。
吉村:中村案
空間の大きさを考えているなという感じがした。割と均質な反復だったところで天井高の高いものをつくったりはずしたりもしていた。夢があってあり得そうなところがよかった。
山代:寺田案
みんなが作品を通して何を考えているのか伝わらなかったのが少し不満。皆さんを取り巻いているものが作品から透けて見えてしまっている。駅ビルやショッピングモール、スタバとかでみんなができているように感じられる作品がほとんどであった。ただ寺田さんはそういうものから逃れようとしている感じがあった。
遠藤:寺田案
卒業設計では今後の自分の核となる案を出すのが重要。卒業設計は20年経ってもそれをやっているくらいのものが見えたものが欲しい。そういった意味で寺田さんは大島にいってそのままやり続けてくれそうな感じがした。

決選投票は寺田3票、中村1票という結果になり、
グランプリは東京大学・寺田慎平さん『東京は、ヘテロトピア』に決定した。

会場の各大学教員の感想

塚本(東工大):
審査員の先生の話を聞いて、その評価に納得した。作品を通しで見たのとプレゼンを聞いたのは印象がかなり違う。
建築を作るのはそこにどういう人々を作るかということになる。
建築としてみると東大の川島さんの作品はすごくよくできている。人間ではないものをテーマに入れていくときにそれをどう考えていくか、今後建築はモノの方に行かないといけない。
大月(東大):
藝大から見ていたが、大学ごとの教育の中で出てきたのがすごく分かる。大学ごとに似たようなアプローチになっている。芸大は身近な問題を軽く解いていて、東工大は都市の真ん中に大きな物を提案するようなもの。東大がバラバラなのは、色々な先生が教えているからで、逆に完成度は落ちている。東工大の中村さんの作品は様々な目線で見ることができている。いろんな立場で捉えられている点は高い評価に値する。社会性をいかに獲得していくかが大事。
小渕(東大):
個人的な「これをやりたい」というものを試す機会が卒業設計、という考えはかなり日本的で、建築学的でない。世界を見られていないのではないか。タイポロジーの中で思考しようという側面が見えない。個人で満足して終わっている部分がある。建築学がどういうものかをとらえて考えられるといい。寺田君が、世界の中での自分の位置づけを言えていたらよかった。そうでないと、20年前にも可能な作品に見えてしまい、ここ20年の建築教育がなかったかのようになってしまう。
山代:
今回の作品からは自分の持っている限界を超えたいという願望があまり感じられなかった。手近な所にとどまっている。また今回技術的な話があまりなかったが(環境、構造など)、そこから設計している人がいなかったのではないか。20年前でも作れてしまいそうな案ではないだろうか。
塚本(東工大):
技術や新しい素材が新しい建築を生む、という問題と、社会的にどのような建築がふさわしいか、という問題が建築の中でまだ統合できていないのではないか。

個人賞の発表と総評

(重複なし、下記の順に選定)
ラシャポーン:個人賞 川島案
川島さんの提案は社会的な問題に対して的確なアプローチであった。
大学ごとのアプローチが違って面白かった。東工大の場合は既存の状態に意欲的。藝大は個人的だったりするけど良い発想が多い。今後こういう機会が増やせるといい。
吉村:個人賞 中村案
リアルなことと格闘している点が良いと寺田君は評価された。また、痛快にそこを突き抜けている川島さんの案は現代的でとても良いと思った。チュラ大の取り組みも面白いと思った。リサーチをし、それを機転として設計するのはとても良い。藝大は独特だと感じたが、ふわふわとしたままで、もう少し空間の問題に落とし込めたら良かった。
山代:個人賞 Prasansiri案
Prasansiriさんの案には衰退する町に取り組むものとして共感するものがあったから。
それぞれを実際にやるとしたら誰が施主になるのかを考えるとデベロッパー、大学など、土地や資金のある所が施主になる案が多いと感じた。
遠藤 個人賞:市村案
応援するという意味もこめて市村さんに。藝大の学生は強い想いはあるのだが、卒制という場に惑わされた感がある。大学間で交流をしたり、昔の案を見たりしないといけないと感じた。少し視野が狭いのではないだろうか。こんなのは建築ではない、というものに取り組んでも良いのではないか。

グランプリ    寺田慎平(東大)『東京は、ヘテロトピア』

個人賞
ラシャポーン賞  川島奈々未(東大) 『Twining Delta: A Pipeline for Life』
吉村英孝賞    中村衣里(東工大)『Love of the city -道頓堀サーヴェイによる環境再編』
山代悟賞     Prasansiri Veerasunthorn(チュラロンコーン大)『Ang-Sila Museum』
遠藤幹子賞    市村梓(藝大)『Park of Instinct -上野公園再編の一端-』

(文責:四大学卒業設計合同講評会実行委員)


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